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【スイス名門校訪問】シルヴィー校長インタビュー inプレフルーリ

ジュネーブ空港から右にレマン湖を眺めながら車で走ること1時間半。

ローヌの谷の入り口にあるエーグルの街からヴィラールという小さなスキーリゾートの村を目指して、20分ほど山道を登る。

車一台がやっと通れる小さな脇道をさらに進むと、両側になだらかな緑のスロープが広がり、その先にスイススタイルの可愛い山小屋が現れる。1948年に創立したプレフルーリの校舎兼ボーディングハウス(寄宿舎)がここにある。

ちょうどミニバンがお揃いのスキーウエアに身を包んだ子供たちを乗せてスキー場に出発するところだった。車のハンドルはシルヴィー校長自らが握る。「この学校は、生徒も先生もスタッフも含めて、みんな家族なんですよ」と笑顔で言い残し、バンは敷地を出ていった。
すれ違う子供、一人一人にフランス語で声がけをするシルヴィー先生は、1996年からプレフルーリで校長を務めている。その存在を一言で表すのであれば校長というより「偉大なる母」と言うほうがふさわしいかもしれない。小さな学校ゆえ、子供たちの学習から日々の食事、学校の設備のすみずみに至るまで彼女の哲学とケアが行き届いている。約25年にわたり学校の運営でリーダーシップを発揮し、学校の文化そのものを築き上げてきた彼女に、プレフルーリが無二の存在であり続ける理由を聞いた。

Q. インターナショナルであるメリットは何でしょう?
A. 我が校に滞在しているのは、平均して15か国から集まった3歳から13歳の子供たち。1948年の創立以来、世界中の国々から子供たちを受け入れてきたインターナショナルスクールです。多様性への深い理解が学校の文化として根付いていますので、「この国出身の子供はこう」という先入観を一切もつことなく、みな平等に接します。
日本の学校ではおとなしく従順な子や、よく躾られている子供ほうが評価が高く、先生からも好まれると聞いています。しかし日本の親御さんの中には、それとは別のアプローチで、子供の個性を尊重し、伸び伸びと育てたいと思われる方もいます。そういうご家族には、我が校は理想的かもしれません。国籍を超えてたくさんの子供たちを育ててきた実績があり、日本の学校にフィットしない子供たちをも受け入れられる度量の広さがあります。 Q. 小規模のボーディングスクールにこだわる理由は?
A. ボーディングスクールの人数は最大で20ー25人。なぜならば、3歳からの小さな子供を見るにはスタッフのきめ細やかな配慮が絶対に必要だからです。これ以上増えると、子供たちのケアの質が下がり、注ぐべき愛情も浅くなってしまいます。スタッフ1に対して、生徒2.5というこの割合には非常にこだわっているのです。
また我が校はデイスクール(通学生)も86(*要確認)名います。全校生徒数を見たら、決して小さすぎる学校ではありません。生徒の国籍で最も多いのはイギリスです。イギリス国内にも小学生用のボーディングスクールがありますが、熱心な親御さんは、この豊かなスイスの環境で子供を育てようと、ヴィラールの村に移り住み我が校を選びます。ですからプレフルーリには英語を母国語として話す子供が常に一定数おり、外国語として英語を学ぶ子供たちは、英語がネイティブの友達と積極的にコミュにケーションをとることで急速に語学を吸収していきます。 Q. プレフルーリが教育で最も大切と考えていることは何でしょうか?
A. 「子供の幸せ」です。これが学習と生活の基礎となりますから。私の最大の使命は、学業でよい成績を治めるように子供たちを導くことではありません。子供たちに安定した感情を与えること、そのために心穏やかに過ごせる環境を整えることが最優先事項です。心の安定は、子供たちのすべての行動に大きく影響します。心が安定すれば問題行動などありえませんし、新しいこと知りたいという好奇心や学びたいという欲求が自然と湧いてくる。それが子供というものです。心の安定を得て湧いてきた「学びたい」という自然の欲求を私たち教師は上手に刺激し、少人数のクラスでしっかりと伸ばしてあげるのです。

Q. 具体的に子供の学びたいという欲求をどのように刺激するのでしょう?
A. この10年間、神経科学の分野ではとても大きな進歩がありました。子供たちへのポジティブなアプローチが自尊心を高め、結果的に勉強したいという意欲を効果的に刺激することがわかったのです。私たちは、この科学的な実証をもとに教育をおこなっています。
未だに教育に携わる多くの方が、小さな子供に対しも「勉強しなさい」とうるさく言い「一に勉強、二に勉強」と急きたてます。驚くのは、それが何より重要だと信じられている点です。プレフルーリでは子供に直接「勉強しなさい」とは言いません。学習への道筋をつけて、子供が勉強したくなる方向に導くという全く別のアプローチをとります。どう道筋をつけるのか。日々、子供たちの心に自尊心の種を植え付けるのです。具体的には「Great!」「Good Job!」「Fantastic!」と頻繁にポジティブな声掛けをする、子供の良き行動を称える印に小さなメダルを与える、毎週行われる全校集会で頑張った子供を表彰するなど、子供が自分に自信をもてるような激励を継続的に行い、自尊心の種に水を与え続けます。それが素晴らしい学業の成果として実るのです。
また子供によって異なる発達や成長の進度を見極めることも重要です。特に小さな子供は、同じ年齢だからといって、皆が同じことを同じようにできるとは限りません。まだ数の概念を正しく理解できていない子に計算を教えたところで、脳にコネクションができていなければ、それは無駄な努力で終わってしまいます。私たちは6ー12人(*要確認…EALクラスは2名と聞いたので)という小規模のクラスで、子供たちひとりひとりをよく観察し、それぞれの脳の発育に合わせたパーソナルな教育を行います。「子供は発達や成長によって、学習意欲や吸収力が異なる」ということを我が校の教師は十分に理解していますので、一緒のスタートラインに立たせ、同じゴールを目指すというような無駄な競争はさせません。 Q. プレフルーリでは競争についてどのように考えていますか?
A. 「もし子供を厳しい競争の中で伸ばしたいと思っているなら、我が校はやめたほうがよいですよ」と最初の段階で親御さんにはっきりと伝えます。親御さんの中には将来成功したビジネスマンやビジネスウーマンになるのであれば、激しい競争の中で育ったほうが良いと考える方もいます。
ですが、リーダーに必要な資質とは何かを考えてみてください。これからのリーダーに求められるのは「カリスマ性」と「創造性」です。これらは競争の中では生まれてきません。 Q. カリスマ性や想像力を、プレフルーリではどのように育むのでしょうか?
A. チームワークでの作業を通して育みます。我が校ではクリエイティブ・ライティング(作文)をグループで作業したり、サイエンスの教師が、2ー4人の小さなグループをつくって子供たちを森の中に連れ出して集団で授業をしたりと、チームワークの授業を積極的に取り入れています。相手の意見に耳を傾ける、自分の主張をする、意見をまとめるといった作業を通して創造性の大切さを知り、リーダーとしていかに振る舞うか、どうやったら皆の意見をまとめられるのかを小さな時から身につけることができると考えています。

Q. スイスの山の中にあるメリットは何でしょうか?
A. 豊かな自然が子供たち与える良い影響はたくさんあります。そのうちひとつをご紹介しましょう。子供たちが取り組む屋外の授業では、五感をフル稼働して学びます。例えば5月の温かい日差しを浴びながら、川の流れる音を聞き、地面に座ってスケッチをする……屋外での授業は室内と比べて時間割の縛りが少ないですから、子供たちはゆったりとした時間の中で、満足できるまで自分の課題に取り組みます。それらを学校に持ち帰り、より学びを深めるのです。時には最新のデジタルデバイスを使ったり、子供同士で議論したり。すると子供たちの集中力や吸収力だけでなく、学ぶ意欲もまた格段に上がっていることに気づかされるのです。
何が子供たちの能力や意欲を高めていると思いますか? それはこの「ゆったりとした時間」です。

子供たちが新しいことを吸収したり、自身を高めていくために必要不可欠なものです。私から見ると最近の子供は忙しすぎます。本人の能力や意思とは関係なく、音楽のレッスンや家庭教師が用意され、学校が終わってからの勉強時間は2ー3時間というのが今の常識。これでは疲れてしまい、じっくり考えることはおろか、本来子供に備わっている能力と意欲が思う存分に発揮できません。私たちが子供に与えたいのは、ゆとりのある落ち着いた時間です。プレフルーリでは子供は大人の事情に振り回されることも、何かを強制的にさせられることもありません。子供のことを最優先に考えた子供のための時間の中で成長を見守っています。

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